ビタミンDが感染症予防に役立つということや、免疫力に作用するという話を、近頃、よく聞くようになりました。日本人の多くの人が、ビタミンD不足だということも耳にします。
では、「1日にどれくらいの量のビタミンDを摂取していたらよいの?」「ビタミンDは、日光浴で合成できるというけれど、具体的にどれくらいの時間の日光浴が必要なの?」という疑問がわいてきました。
早速、書籍で調べてみましたので、わかったことをシェアしたいと思います。
ビタミンDとは?
ビタミンDは、コレステロールを原材料に皮膚で作られます。皮膚が紫外線を浴びることにより、ビタミンDが合成されるのです。その役割や性質から、「ビタミン」というよりは、一種の「ホルモン」であると言われています。
ビタミンDが骨を強くする作用があることは、広く知られていますが、近年は、免疫力の強化、がん発生の抑制、うつ病予防など、ビタミンDによるその他の効果についても注目を集めています。
ビタミンDの役割は骨を丈夫にするだけではない!
ビタミンDの役割は、実にたくさんあります。
- 骨粗しょう症の予防
- がん、感染症、自己免疫疾患の予防
- 糖尿病予防
- うつ病予防
- 認知症予防
- 花粉症やアトピー性皮膚炎の予防
あらゆる機能に影響しているということは、不足すると大変なことになりそうですね。
主要な役割を順にみていきましょう。
骨を丈夫にする
骨といえばカルシウムですよね。カルシウムは小腸から体内に吸収されます。このときに、カルシウムの吸収をスムーズに行うために、働きかけているのがビタミンDなのです。
つまり、カルシウムだけを摂ってもビタミンDがなければ、うまく小腸に吸収できないのです。
骨を丈夫にするために必要なのは、カルシウムだけではなかったんですね!
ビタミンDが不足すると、骨がもろくなり、くる病や骨粗しょう症のリスクが高まってしまいます。
『アルプスの少女ハイジ』に出てくる車椅子の少女クララは、くる病だったのではないか、というエピソードが、今回参考にした本『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』の中に出てきました。
物語の舞台は19世紀末。
産業革命以降、工業化が進んだヨーロッパでは大気汚染が起きて、日光の紫外線が遮られたうえに、とくに日照時間が短い北欧では、ビタミンDの必要量を皮膚で合成できなくなっていたと思われます。当然、カルシウムの吸収も悪くなります。そのため、くる病が多発していたのです。
ドイツのフランクフルトから、大自然があるスイスのアルプスにうつってきたクララは、ハイジと暮らすうちに、紫外線を浴びる機会がふえ、ビタミンDの含有量がふえたのでしょう。
口論の途中で思わず立ちあがってハイジを驚かせたのは、奇跡ではなく、ビタミンDの働きでカルシウムの吸収率があがって、骨が強くなり立てるようになったのではないか、ということです。
免疫力を強化する
ビタミンDは免疫力に作用しますので、がん予防、感染症予防、自己免疫疾患、花粉症、アトピー性皮膚炎など慢性疾患を防ぐ効果が期待されています。
かつて、命を落とす病気だった結核の患者は、治療薬がないため療養をするしかありませんでした。その療養の中で、日光浴は重要な要素でした。
ジブリアニメの『風立ちぬ』でヒロインの菜穂子が寒い中、病院の外のベッドで寝ているシーンがありましたね。「サナトリウム」という自然豊かな場所にある隔離施設で、日光浴をすることが重要な療養法でした。実際に、日光浴で治癒する患者さんもいたそうです。
そのメカニズムは、日光浴でビタミンDが体内に増え、マクロファージという免疫細胞が活性化され、結核菌を退治できたから、というわけです。
あらゆる病気や感染症に、免疫細胞の活性化は有効ですので、そういった意味でもビタミンDは注目を集めています。
うつ病予防
うつ病の主な原因は、脳内の神経伝達物質の働きが悪くなることです。ビタミンDには、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の作用を改善させる働きがあります。
冬に気分が落ちたり、雪国や北欧でうつ病が発生しやすいのは、日照時間が短くビタミンDの合成量が減るのも一因といわれています。
適切な血中ビタミンD濃度と検査方法
私たちの身体にビタミンDが足りているかを知るには、どうしたらよいのでしょうか。ここでは、適切な血中ビタミンD濃度の基準と、その検査方法について紹介します。
血中ビタミンD濃度の検査方法
自分の身体にビタミンDが足りているのかを知るには、採血で「ビタミンD血中濃度」を調べる必要があります。
この検査は、骨粗しょう症の診断を受けている人以外は、保険適用外となります。クリニックによって多少変動はありますが、検査費用は、3,000円~4,000円程度のようです。
適切な血中ビタミンD濃度は
適切な血中ビタミンD濃度はどれくらいなのでしょうか。書籍『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』によると、ビタミンD充足度は、以下のようになります。
<ビタミンD充足度>
20ng/ml未満:欠乏症レベル
『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』 斎藤 糧 / 著
20ng/ml~40g/ml:不足レベル
40ng/ml~50g/ml:充足レベル
50ng/ml~90g/ml:最適レベル
100ng/ml以上:過剰レベル
この区分は医師によって多少、捉え方が変わるようです。『最強の食事術』満尾 正 /著では、至適値(最適レベル)を40ng/ml~80ng/mlとしており、ビタミンD研究の第一人者である「Dr.ビタミンD」ことホーリック博士は、40ng/ml~60ng/mlとしているそうです。
ところで、血中ビタミンD濃度の日本人の平均は、20~25ng/mlだそうです。平均が「不足レベル」って低いですよね。
私の事例 血中ビタミンD濃度の検査結果
ちなみに私が血中ビタミンD濃度を検査したときは、22ng/mlでした。日本人平均レベルで「不足レベル」ですね。
医師は、日本人平均レベルだから心配ない、といったような見解でしたが、私はそもそも日本人全体の血中ビタミンD濃度が低いのだし…とも考えています。
私自身、風邪のひきやすさと治りづらさに困っているので、免疫力強化の目的で、まずは40ng/mlを目指して対策を考えたいと思います。
1日のビタミンD摂取量の理想は?
適切な血中ビタミンD濃度に近づくには、1日にどれくらいのビタミンDを摂取すればよいのでしょうか。
血中ビタミンD濃度を最適レベルにし、慢性的な疾患の予防や改善をするためには
1日4,000IU(100ug)を目安
※成人の場合 / 皮下での合成と食事やサプリによる接取による
(『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』斎藤 糧三 / 著 より)
が推奨されます。これは、血中ビタミンD濃度が最適レベルの下限値40ug/mlまでに高めるのを目的とした量です。
ちなみに、書籍によっては推奨する量には多少幅があります。
例)
2,000~5,000IU(40ug~125ug)『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の栄養レシピ100』
1,000~5,000IU(25ug~125ug)『最強の食事術』
ビタミンDの摂取方法は
ここまでで、推奨される1日のビタミンD摂取量がわかりましたね。では、植物からビタミンDを摂取する場合、具体的に何をどれくらいの量を食べたらよいのでしょうか。また、日光浴は何分くらいが効果的なのでしょうか。
順にみていきましょう。
食事からのビタミンD摂取
まず、どんな栄養素も食事から摂ることは大切ですよね。
鮭やさばやいわしなどの青魚は、ビタミンDを豊富に含んでいます。
<ビタミンD含有量目安>
- 鮭1切(100g)32ug
- スモークサーモン4枚(50g)14ug
- イワシの丸干し(80g)40ug
鮭は日本の食卓にお馴染みの魚なので、摂りやすそうですね。さばやいわしは缶詰も上手に活用したいところです。
日光浴によるビタミンD合成
ビタミンDは、紫外線を浴びることによって皮膚でつくられますから、日光浴も大事です。
1日に20分程度の日光浴を週に3日行うだけでも、血中ビタミンD濃度をあげる効果があるそうです。紫外線の強い正午付近の時間帯に、日光を浴びるとより効果的とのこと。
お昼ご飯を買いに出かけたり、外でお弁当を食べたりするのもよさそうですよね。
ここで大事なのが、手足などなるべく肌の露出をすること。全身に日焼け止めを塗って、アームカバーを着けて、帽子を被って……といったように日焼けに対して完全防備なスタイルですと、なかなか効果は得にくいです。
シミやシワを避けたい、日焼けを避けたい、という美肌重視の方にはなかなか悩ましい問題ですよね。ここは「何を優先的に得たいか」にかかってくるのでは、と思います。
また、日焼けというと皮膚がんのリスクも気になるところですが…
『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』では、
死亡リスクの低い皮膚がんを恐れて、紫外線を避けるよりも、死亡率の高い大腸がんや肺がんのリスクを避けることの方がプラスに働く
『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』斎藤 糧 / 著
という考え方をされていました。
この考え方には、納得感があると思います。
私の結論は、日常的には顔だけ日焼け止めを塗って、他はなるべく肌を出して日光浴をする、ですね。もちろん、真夏のビーチでは、顔以外にも日焼け止めを塗りますよ!
もうひとつ、ここで注目なのが、「紫外線の種類」です。
紫外線(UV)にはUVA、UVB、UVCの3種があります。
ビタミンDを作る働きをするのは、UVBですがこれはガラスを通過できないので、ビタミンDを合成するには、屋外でUVBを浴びる必要があります。
ということは、ガラス越しの日光ではビタミンDが作れないのです。
これまで、外に出る余裕がないときは、ビタミンD合成を意識して室内の日があたる場所で仕事をしていたりしました。それが、全くの無駄な努力だったということです。ショック……。
ちなみに、UVCは、人体にもっとも有害ですが空気中の酸素とオゾン増で吸収され、地表には届きません。UVAはガラスを通過しますので、「室内でも日焼け止めクリームを!」と言われるのはそのためです。
地表に降り注ぐ紫外線全体の約10%がUVB、残りの約90%はUVA。UVBは、日焼けの原因に、UVAはシミ&シワの原因になると言われています。
ビタミンDサプリで摂取
食品や日光浴で必要なビタミンDを摂れているのが理想ですが、思うように食品から摂れなかった日や日照時間が少なく、服で身体を覆う面積が多い冬には、そうもいきませんよね。
そんなときは、サプリでビタミンDの摂取をサポートするとよいでしょう。
その日の食事内容や量、どれくらい日光を浴びたかにもよりますが、先ほどの目安1日4,000IU(100ug)に対してどれくらいが不足しているかを考えて、1日の終わりに飲む量を決めるとよさそうです。
ビタミンDのサプリは、メーカーによって1錠が1,000IUだったり、5,000IUだったりします。ざっくりと、全体の量の半分くらいをサプリで補う日があるとした場合、1錠5,000IUのものを2日に1回飲むよりも、1錠が1,000IUまたは2,000IUのものを何錠飲むのか調整する方がやりやすいと感じました。
ですので私は、1錠が1,000IUのものを試してみることにしました。3か月くらいの間、サプリからは1日2,000IUくらいまでを目安に摂取してみる予定です。
3か月くらい経過したら、クリニックに血中ビタミンD濃度を測りにいきたいと思います。サプリだけに頼らず、食事と日光浴も取り入れつついきます。
ビタミンDが不足すると何が起こる?
ビタミンDが不足すると、カルシウムが不足して骨の軟化が起こります。子どもの場合は、くる病や骨の成長障害、大人の場合は骨粗しょう症になりやすくなります。
ビタミンDの働きは骨だけではないことは、すでにお話しした通りですが、がんや感染症の罹患リスクも高まります。
ビタミンDが過剰になるとどうなる?
ビタミンDが過剰になると、高カルシウム血症が起こるリスクがあります。腎機能障害や食欲不振、嘔吐、頭痛などの症状が現れます。
身体の仕組み上、日光浴でのビタミンD合成量には上限があります。ですので、日光浴の時間が長すぎて、ビタミンDの量が過剰になってしまう心配はないんですね。
日本人の血中ビタミンD濃度の平均が、「不足レベル」の20~25ng/mlであるように、通常の生活をしている限りでは、どちらかというと過剰よりも不足に注意した方がよいのかな、という印象です。ただし、サプリでの大量摂取には注意した方がよいと思います。
「これ以上摂らなければ安全」という量の上限が1日あたり4,000IU(100ug)です。先ほど、推奨する摂取量として紹介した量と同じです。
私自身は、現時点でビタミンDが不足している状態なので、上限の量を摂取することを目指しつつ、改善に向かっていきたいと考えています。
おわりに~食事、サプリ、日光浴でビタミンD不足を解消したい~
まとめますと、
<血中ビタミンD濃度の最適値>
40ng/ml~80ng/ml
※日本人の平均値は20~25ng/mlの「不足レベル」
<1日のビタミンD摂取量目安>
1日4,000IU(100ug)を推奨
青魚などの食事から摂取することと、日光浴による皮下でのビタミンD合成が必要。
<日光浴目安>
1日20分程度を週に3日程度。
食事と日光浴で不足する分は、サプリで補足するのもあり。
検査時点で、私の血中ビタミンD濃度は22ng/mlでした。食事、日光浴、サプリの3本柱で改善に努めてみます。3か月後くらいに1度検査してみて、その結果をまたシェアできたらと思います!
■参考にした書籍
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の栄養レシピ100』瀬尾 正 / 著 ・監修 牧野 直子 / 料理
『最強の食事術』瀬尾 正 / 著
『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』斎藤 糧三 / 著
『がん予防に実は「日光浴」が有効なわけ――ビタミンDの驚きの効力』平柳 要 / 著