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薬が効かない日が来る?耐性菌の問題とアロマが注目されるわけ

「薬剤耐性」という言葉を聞いたことはありますか?抗生物質などの抗菌薬が細菌に効かなくなることを意味する言葉です。

私は、その言葉をアロマのワークショップに参加した時に知りました。このままいくと、抗生物質が効かない未来がやってくるかもしれない、と知って衝撃を受けました。
さらに、薬剤耐性への取り組みの中で、近年はアロマへの注目も高まっていることも知りました。

そこで今回は、薬剤耐性とそれによりアロマが注目されているわけについて、調べたことを書いていきます。

目次

薬が効かない未来が来るってどういうこと?

薬への抵抗力が高くなり、薬が効かなくなった細菌を「薬剤耐性菌」といいます。

このまま何の対策も行わず、耐性菌が増え続けてしまうと、2050年には世界における耐性菌の死亡数は、1,000万人。がんによる死亡者の数を超えると言われています。

そもそもなぜ、耐性菌が増え続けているのでしょうか。

風邪に薬は効かない

「医者は自分の子供に風邪薬を飲ませない」という話を聞いたことがあります。それは、薬が風邪に効かないからなんですね。身体を温かくして、水分補給をして、りんごのすりおろしでも食べて、寝るのが一番の回復への道なのです。

私の子供の頃には、風邪をひいては病院に連れていかれ、よく薬を飲んでいました。大人になってからは、風邪をひいたら市販薬を飲み、悪化した場合は病院にいって、抗生物質を処方してもらうこともありました。
抗生物質がまるで、即効性のある万能薬のように勘違いをしていたのです。

その抗生物質への誤った認識が、薬剤耐性をうむひとつの要因でもあるのです!

そもそも風邪はウィルスによるものなので、細菌に効く抗生物質を飲んでも効きません。ウィルスに効く抗ウィルス薬はありますが、風邪に効く抗ウィルス薬はありません。

それでも、風邪で抗生物質を処方された経験が、みなさんにもあるのではないでしょうか。効かないにも関わらず、風邪に対して抗生物質を使うことは薬剤耐性をすすめてしまうことにもなるのです。

それに風邪薬は、症状を緩和させる薬で、風邪を治す薬ではないんですね。

ときには、どうしても休めない仕事があったり、つらい症状のせいでよく眠れずに、体力が奪われてしまうこともあるでしょう。そんなときは、補助的に風邪薬に頼るのも悪くないのかもしれません。

とはいえ結局は風邪を治す薬はないので、本来は大人も子ども同様に、水分補給に気を付けながら、温かくして休むのが一番の回復方法というわけです。

細菌とウィルスの違い

細菌とウィルスの違いはなんでしょう?この2つは混同しがちで、どちらも同じモノのように思っている人も多いのではないでしょうか。実は、私もこの2つについての認識が曖昧でした。

細菌は、単細胞の生物です。細胞分裂により自力で増殖します。治療には抗生物質を、予防にはワクチンを使います。
ウィルスは、生物と非生物の中間的な存在で、生物の細胞に感染する複合体です。ウィルスは自力で増殖できず、生きた細胞の中で増殖します。治療法は、抗ウィルス薬で予防はワクチンです。

ちなみに、ウィルスよりも細菌の方が大きくて、細菌の大きさはウィルスの10倍~100倍程度です。どちらも、人間の肉眼では見えないくらい小さくはあるのですが……。

抗生物質とは?

細菌性の感染症の治療薬が抗生物質です。1928年にイギリスの細菌学者フレミングがペニシリンを発見したのが抗生物質の始まりです。

それまで、多くの感染症は治療薬がなく、自然治癒を待つしかなかったのです。ペニシリンの発見を機に様々な抗生物質が作られ、それまで不治の病とされていた感染症を治療できるようになりました。ペニシリンの発見は、「医学の歴史上、もっとも重要な発見」といわれています。

ただ、多くの命が救われた一方で、抗生物質が効かない薬剤耐性菌が次々と発見されてしまいました。
耐性菌に対抗できる新しい抗生物質を開発しても、またそれに対する耐性菌が出てきます。抗生物質の開発と細菌の耐性獲得は、まさにいたちごっこなのです。

抗生物質の正しい飲み方

薬剤耐性の予防に個人ができることもあります。それは、処方された抗生物質を正しく服用することです。具体的には、処方された抗生物質を「飲み切ること」と「人にあげない、もらわない」ことです。

症状がおさまったように感じていても、処方された抗生物質は飲み切ることが重要です。なぜなら症状がおさまっても、体内にはまだ病原菌がいて、完治していない可能性もあるからです。不十分な飲み方をしていると、薬剤耐性菌が生まれる可能性が高まってしまいます。

また、飲み切らずに残しておいた抗生物質を誰かにあげたり、もらったりするのは厳禁です。

抗生物質はそのときの症状や体質、年齢などに合ったものを処方されています。自分以外の人に処方されたものや、別の機会に処方されたものを服用しても、効果がない可能性や思わぬ副作用が起きるリスクもあるからです。

このような不十分・不適切な飲み方が薬剤耐性菌を生む可能性を高めてしまうのです。

薬剤耐性(AMR)とは

薬剤耐性菌は、もともと人間の体内にもいるのです。もともと体内にいる耐性菌は、少量なので特に問題は起こりません。

ただし、スペクトラムが広い抗生物質を使いすぎると、薬剤耐性菌の割合があがってしまうのです。「スペクトラム」とは「広範囲にわたる」という意味の言葉です。抗生物質の「スペクトラムが広い」とは「多くの種類の細菌に効く」ことを指します。

スペクトラムが広い抗生物質を使うと、原因となる細菌以外の体に害のない細菌(常在菌)までやっつけてしまいます。生き残った耐性菌は、他の菌がいないうちに増殖をします。

また、退治しきれなかった病原菌が薬剤耐性菌に変化しやすい環境にもなります。その結果、耐性菌の割合が多くなり、抗生物質が効かなくなっていきます。これが「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)」です。

薬剤耐性菌が増えた結果、それ自体が感染症を引き起こすこともあります。

薬剤耐性菌といっても、今のところ全ての抗生物質が効かないわけではありません。ただ、使用できる薬が少ないために、治療に時間がかかり、重症化するリスクが高いのです。

スペクトラムが広い抗生物質の代表に「レボフロキサシン」があります。日本ではレボフロキサシンが大量に使われてきました。レボフロキサシンが効かない大腸菌が増えてきていることが問題になっているそうです。

風邪での抗生物質の使用や、スペクトラムが広い抗生物質の使いすぎなど、不適切な抗生物質の使い方が薬剤耐性の原因となっているのです。

アロマなどの植物療法が注目されている理由

薬剤耐性菌の問題などから、再びアロマテラピーなどの植物療法が注目されています。現代のように医療が発展する前は、植物は薬のような役割を果たしてきました。

ペニシリンの発見で、その役割が化学薬品とって代わられていましたが、化学薬品の副作用や耐性菌の問題などから、再び植物の力に注目が集まる原点回帰のような流れが起きています。

また、エッセンシャルオイル(精油)のように植物の成分に関する科学的解明も進みつつあり、香りによるリラックス効果のほか、植物の抗菌作用や抗炎症作用などにも注目されるようになりました。

アロマテラピーのような植物療法は、代替療法や西洋医療の補助的な役割としても注目が高まっています。

エッセンシャルオイル(精油)とは?起源と歴史

エッセンシャルオイル(精油)の起源は、古代エジプト時代にさかのぼります。

古代エジプト時代には、ミイラの防腐剤としてミルラというエッセンシャルオイル(精油)が使われていました。ミルラは、ミイラの語源にもなっています。宗教儀式には、フランキンセンスというエッセンシャルオイル(精油)が使われてました。

このように、エッセンシャルオイル(精油)の歴史は古く、古代から植物の活用や研究がされておりました。特に、中世ヨーロッパでは植物療法が盛んでしたが、19世紀になると化学薬品が治療の中心となり、植物療法は衰退します。

アロマテラピーの歴史は20世紀フランスから始まります。
フランス人科学者のルネ・モーリス・ガットフォセが実験中にやけどを負い、ラベンダーのエッセンシャルオイル(精油)をつけたところ、傷が治ったそうです。

その後、彼はエッセンシャルオイル(精油)の研究を続けることになりますが、このときにアロマテラピーという言葉が生まれたのです。

また、20世紀には、現代医療の問題点も指摘され始め、ヨーロッパでは、植物療法が取り入れられるようになりました。
フランスでは医療としてのアロマテラピーが発展していき、イギリスではリラクゼーション効果を高めるためのものとして、アロマテラピーが発展していきました。

日本では、アロマテラピーは医療としてではないものの、医療の補完的に介護現場などでも少しずつ取り入れられています。

エッセンシャルオイルが再び注目された理由

現代医療の在り方に疑問を呈する動きはもともとありましたが、薬剤耐性の観点からもエッセンシャルオイル(精油)に注目が集まっている理由は、植物の力が抗生物質の耐性菌にも有効だからです。
また抗菌作用において、耐性菌が生じにくいということもあります。

植物が精油成分を含む理由には、

  • 昆虫や鳥などの外敵から身を守るために、敵が嫌う香りを出す
  • 子孫繁栄のため、受粉を助けてくれる昆虫を香りで呼び寄せる

があります。

他には傷の治癒、エネルギー源、乾燥や湿気、温度変化などの環境の変化に対応する、などの役割もあります。動物と違って、動けない植物の生存戦略を凝縮したものが、エッセンシャルオイル(精油)というわけですね。

おわりに~植物の力にも今後も注目していきたい~

多くの命を救ってきた抗生物質ではありますが、不適切な使用をすると薬剤耐性菌が発生する可能性を高めてしまうという問題があります。このまま薬剤耐性菌が増え続けると、本当に必要なときに効く薬がなくなり、これまで助かっていた病気で命を落とす人が増えてしまいます。

個人においても、抗生物質に対する正しい理解を深め、適切に抗生物質を使用していくことと、感染症予防など日頃からの対策が重要なのだとわかりました。

また、こういった問題などから、再びエッセンシャルオイル(精油)などの植物の力に注目する動きが起きています。
植物の抗菌作用は薬剤耐性菌にも有効で、かつ耐性菌が発生しにくいことが理由です。植物の力にも注目しながら、未来に向けて、一個人としてもこの問題に向き合っていきたいと思います。

■参考にした書籍と資料

『くすりがきかない未来』 石金 正裕 ・うえたに夫婦 / 著

『医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』 橋口 玲子 / 監修

ウイルスと細菌はどう違うの?
https://www.ims.riken.jp/poster_virus/virus/bacteria/

香りの抗菌作用-ア ロマセラピー への応用https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/39/7/39_7_475/_pdf

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