休んでいるのに疲れが取れないのはなぜ?『休養学』に学ぶ活力の整え方

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疲れを感じたとき、私たちは「寝よう」「休もう」と思います。でも、なかなか回復しない、翌朝も疲れが残っている……そんな経験はありませんか?
本記事では、片野秀樹さんの著書『あなたを疲れから救う 休養学』をもとに、「疲労」と「休養」に対する考え方を見直すヒントをまとめました。
キーワードは「活力」。日々の暮らしを前向きに過ごすための「攻めの休養」をご紹介します。

目次

疲れを放置するとどうなるのか

疲れていても「まだ大丈夫」「気のせい」と自分に言い聞かせ、頑張ってしまう人も多いのではないでしょうか。
はじめに、疲労が私たちの体にどのような形で現れるか、そして疲労を放置することで起こりうるリスクをみていきましょう。

疲労の定義は「活動能力の低下」

日本疲労学会では、疲労は次のように定義されているそうです。

過度の肉体的・精神的活動や疾病によって生じた、独特の不快感と休養欲求を伴う、身体の活動能力の減退状態

もう少し平たく表現すると、体や頭を使った活動をしたことによって、「本来の活動能力が下がった状態」が「疲労」です。
つまり、体が「これ以上の活動は無理だよ」と伝えている警告サインなのです。

疲労をマスキングできてしまう危うさ

さらに本書では、多くの人が疲労を軽視しやすい点と、疲労をマスキングできてしまう危うさについて述べています。

確かに発熱や胃腸炎など数値や状態でわかる体調不良に比べて、疲労は会社を休む理由にしづらいという感覚は私にもあります。

そして、疲れを感じつつも、気合いやカフェインでごまかしながら働き続けることができてしまう。でも、気合やカフェインで一時的に疲れをマスキングしても、体は確実に消耗を重ねているんですよね。

疲れを正しく認識できないまま過ごしてしまうと、自覚のないうちに限界を超えてしまう可能性があります。頑張り屋さんほど、自分の疲れに気づかないという落とし穴があるのです。

過去に私は、体に限界を感じていても休まずに働き続けていたことがあります。
コーヒーや栄養ドリンクで疲れをごまかしながら深夜までPCに向かい、興奮した状態を鎮めるためにお酒を飲んでから寝る、という日々でした。
私が持病(SLE)を発症したのは、疲労を軽視していたこともひとつの引き金になったのではないか、と今では思っています。

疲労の蓄積がもたらす「バーンアウト」というリスク

『休養学』では疲労をマスキングし続けた先のリスクについても警告しています。

疲労が蓄積すると、ある日突然「何もしたくない」「頭が動かない」といった状態に陥ることがあります。これが、いわゆる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」です。
そうなると、仕事だけでなく日常生活にも支障をきたしてしまいます。

心身が限界に達してからでは回復に時間がかかってしまいますので、疲れは早めにケアすることが大切です。

疲れを放置すると免疫や自律神経にも影響する

さらに見逃せないのが、疲れと自律神経・免疫機能の関係です。
『休養学』では、疲れが慢性化すると免疫力が低下し、風邪をひきやすくなったり、体調不良が長引いたりすると述べています。

また、自律神経が乱れると「眠れない」「倦怠感がある」といった状態が続きやすくなります。疲労は、体が本来持つ回復力そのものを妨げてしまう要因なのです。

疲れの背景を知れば、休み方が変わる


睡眠をとっても疲れが回復しない、ということはよくありますよね。
『休養学』では、疲労の背後にはさまざまなストレスの要因があり、疲れ方や回復のしやすさに違いが出てくると述べています。
次に、疲れの背景についてみていきましょう。

「疲れのもと」はストレスにあった

『休養学』では、疲労の正体はストレスにあると語られています。
ストレッサーと呼ばれる「疲れのもと」は、次のように分類されています。

物理的ストレッサー=暑さ、寒さ、騒音、雑音、振動
化学的ストレッサー=公害、薬物、化学物質
心理的ストレッサー=不安、緊張、怒り、悲観
生物学的ストレッサー=細菌、感染、ダニ
社会的ストレッサー=家族関係、友人関係、人間関係

ストレスというと、不満や我慢などのイメージがありますが、暑い寒いなどもストレスなんですね。
確かに、心地よい気候のときよりも暑さや寒さに厳しい季節は、体に負担がかかっている気がしますよね。

それに、結婚や昇進など、喜ばしい出来事も、生活の変化という意味ではストレスなんだそうです。
自分でも気づかないうちに、受けているストレスもあるかもしれません。

まずは、「何が私を疲れさせているのか?」と自分に問いかけてみましょう。

疲れ方にも傾向がある。あなたはどのタイプ?

『休養学』では、自律神経の働きに注目して、疲れやすさの傾向を4つのタイプに分けています。
これはアクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)のバランスから見る分類で、以下のような特徴があります。

【A】アクセルもブレーキもばっちりな「バランス良好タイプ」
【B】ブレーキがききにくい「がんばりすぎタイプ」
【C】アクセルがききにくい「だらだらタイプ」
【D】アクセルもブレーキもきかない「ぐったりタイプ」

【A】はアクセル(交感神経)もブレーキ(副交感神経)も強く、疲れても持ち越さない理想的タイプ。
【B】は交感神経が強く、副交感神経が弱い。現代人に多く、リラックスが苦手。
【C】は副交感神経が優位で、交感神経が弱く、朝からエンジンがかかりにくいタイプ。
【D】はどちらの神経も低下しており、すぐ疲れてなかなか回復しない慢性疲労状態。

あなたはどのタイプに当てはまりそうですか?
私は、疲れをマスキングをして無理していた時代は、【B】でした。
最近は、【C】の状態が多い気がします。常に【A】でいられる状態を目指したいですね。

「私は何に、どう疲れている?」と問い直してみる

大切なのは、「疲れている」と思ったときに、疲れ方を一段深く見つめてみることです。
たとえば、【B】タイプならがんばりすぎにブレーキをかけるリラックス時間が必要ですし、【C】タイプには朝の軽い運動がエンジンをかけるスイッチになるかもしれません。

私たちの疲れには背景があるんですよね。最近の日々はどうだったか、暮らしや気持ちを振り返ってみると、今の自分が何に、どう疲れているかわかると思います。

活力を高めるという休養の新常識

『休養学』では、疲労の反対は活力であると述べられています。ここでは、新たな視点でみた休むことの目的をみていきましょう。

守りの休養から攻めの休養へ

休むというと、疲れで減ってしまった分のエネルギーを元に戻すこと、と考えがちですが、それだけでは不十分です。

辞書を引くと、疲労の反対語は「活力」であると書いてあります。

とあるように、本書では、「疲労の反対は活力である」と定義し、休養の目的は疲れた体を元に戻すのではなく、プラスのエネルギーを養うことであると述べています。

スマホの充電にたとえるなら、従来の休養スタイルでは、100%のフル充電状態に戻せていない人が多いのが現実。
フル充電に近い状態にもっていくためには、活力を加える休み方が必要だといいます。

気持ちよい負荷が活力を生むという考え方

「少しがんばる」「ちょっと挑戦する」といった自発的なよい疲れは、活力を高める効果があるそうです。
たとえば、楽しいイベントへの参加や、軽い運動、自然の中を歩くといった活動がそれにあたります。
基礎体力をあげていく、ということなんですね。
ポイントは、やらされるのではなく、自分の意志でという点です。

本書では、活力を得られる活動には4つの条件があると述べられています。

活力を高める4つの条件とは

  1. 自分で決めた負荷であること
  2. 仕事とは関係ない負荷であること
  3. それに挑戦することで、自分が成長できるような負荷であること
  4. 楽しむ余裕があること

これらを満たすことで、疲れを上回る前向きなエネルギーが生まれるといいます。

7つの休養タイプで日々のエネルギーを整える

『休養学』では、休養を大きくわけて、生理的休養、心理的休養、社会的休養の3つにわけ、さらに次の7つに分類しています。

生理的休養
└休息タイプ(睡眠、仮眠、休憩、ソファでゴロゴロ)
└運動タイプ(ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、軽く運動)
└栄養タイプ(食事量を控える、胃腸に優しい食事、ファスティング、白湯)

心理的
└親交タイプ(ペットと触れ合う、親しい人とハグ、挨拶・雑談、森林浴)
└娯楽タイプ(推し活、読書、音楽・映画鑑賞、習い事)
└想像・創造タイプ(日曜大工・DIY、絵や詩をかく、瞑想、空想)

社会的休養
└転換タイプ(部屋の模様替え、旅行、洋服を着替える、買い物・外食)

これらの休養タイプを組み合わせることで疲労回復効果が2倍にも3倍にもなるといいます。

社会的休養に分類されている旅行は、これらのタイプがうまく組み合わせられる休み方ですよね!普段より多く歩いたり、自然に触れたり、芸術を鑑賞する機会もあります。
私、旅行大好きなのですが、さすがに毎月のようには行けません。なので日常でも7タイプをうまく組み込んでいきたいなあ、と思います。

私の日常は、2. 運動タイプ、4. 親交タイプが不足しているように思います。意識して取り入れていきたいと思います。

「疲れたら休む」から「備えて休む」へ

「もう無理」となる前に、あらかじめ休む。この予防的な休み方こそが、現代に必要な休養スタイルです。
ここでは、攻めの休養を生活の中に取り入れる方法をみていきます。

活動の前に休む──回復よりも準備の休養を

たとえば、大事なプレゼンの前にしっかり眠っておく、家族行事の前に一人の時間を作っておくなど、「休養の先取り」は日常でも実践できます。

著者の片野氏が住んでいたドイツでは、新年のはじめに、
「それぞれのメンバーがその年に長期休暇をいつとるかみんなで話し合う」そうです。
素敵ですよね。

日本の職場では、仕事が優先、休暇を先に決めるなんて発想はないところが多いですよね。せっかくの家族旅行中も、職場からの連絡の対応に追われているなんてケースも多そうです。
ヨーロッパのバカンスという文化にも憧れます!

日常の中に「攻めの休養」を組み込む

「たくさん寝る」「何もしない日を作る」だけが休養ではないことがわかりました。日常の中で、ちょっといい習慣を取り入れることが、攻めの休養につながるわけですね。

たとえば、昼休みに公園を散歩する、寝る前に音楽を聴くなど、自分の疲れ方に合った習慣を持つことで、疲労の蓄積を防ぎ、活力を育てていくことができそうです。

おわりに 


『休養学』を読んで印象的だったのは、休養とは備えであるという視点です。
疲れの種類を知り、自分に合った休養法を取ることで、活力を養えることがわかりました。
日々の生活の中に、「攻めの休養」も取り入れながら、活き活きと過ごしていきたいものですね。
今回の記事が、みなさんの明日の活力につながれば幸いです。

参考書籍:『休養学―あなたを疲れから救う』

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