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思い出のおやつで大事な思い出と再会する 『ライオンのおやつ』

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先日の死生観講演会に参加して、私は終末期を題材にした小説『ライオンのおやつ』(著:小川糸)を思い出していました。

主人公の雫は33歳の女性。雫が、瀬戸内海のに浮かぶ島「レモン島」にある「ライオンの家」という名のホスピスに向かうところから物語は始まります。

雫がライオンの家を選んだのは、
海を見ながらゆっくり休みたい
チューブに繋がれずに、ぐっすりと眠りたかった
からなのです。

「ライオンの家」という名称は、ライオンが百獣の王であることに由来しています。

百獣の王であるライオンは、
敵に襲われる心配がない
安心して、食べたり、寝たりできる。
ここのゲスト(居住者)たちも、ライオンのように安心して、食べたり、寝たりできる、というわけです。

ライオンの家では、自由に過ごす、ことくらいしかルールがありません。
(もちろん、必要なサポートは受けらえますが)

好きなものはなんでも食べたり飲んだりしていいのです。
雫は、闘病中には我慢していたコーヒーも飲んでいいことに驚くのでした。


そして、ライオンの家には「おやつの間」があります。
そこで、毎週日曜の午後3時からお茶会が開かれます。

ライオンの家では、ゲストがもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストすることができることになっています。
毎回、ひとりずつのリクエストに応えるかたちで、ゲストのみんなでおやつを一緒に頂くのです。

おやつを忠実に再現するべく、ゲストは
「どんな味だったか、どんな形だったか、どんな場面で食べたのか」
思い出をありのままに書いてリクエストすることになっています。

おやつが出される順番はくじ引きです。

なので、リクエストした当人がおやつを食べられない場合もあります。
当人が亡くなった後のこともあれば、もう食べられない状態のときもあるからです。

それでも、そのおやつが出されたことは無意味ではありません。

おやつが出されるときは、ライオンの家のオーナー「マドンナ」がリクエストした当人が記したそのおやつにまつわるエピソードを読み上げます。
一緒におやつを食べるゲストたちにも、思い出が共有されるのですね。
リクエストした当人のことを思い、その思い出を想像しながら、皆で一緒におやつを食べるのです。

自分の思い出のおやつをひとつ上げるとしたら何か。

それを考えることは
大事な思い出と再会すること
人生を振り返ること
なんだなあ、と思いました。

雫はなかなか思い出のおやつを選べずにいます。

他のゲストが選んだおやつは、豆花(トウファ)、カヌレ、アップルパイ、牡丹餅…など。
思い出のおやつ、というと手作りのものをイメージしやすいですが、なかには、「コンビニのロールケーキ」なんて人もいます。(ちゃんと、それっぽい袋に入れて出してくれる!)

さて、雫は何を選んだのでしょうか。それは、この小説を手に取るときのお楽しみにしておきましょう。

あなたは思い出のおやつに何を選びますか?

私は、子どもの頃に母に作ってもらったヨーグルトケーキが浮かびました。

ヨーグルトケーキが入れられたデザート用の器の底には、砕いたリッツが敷かれていて、私はそのヨーグルト味の本体とリッツが混ざった場所を食べるのが好きでした。
今ではもう、リッツは販売終了してしまいましたね。


大事なことを思い出させてくれるいい機会になるかもしれません。ぜひ、読んでみてください。

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生き方を考えるきっかけを与えてくれた講演会でした。
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