先日、映画『ハッピーエンド』を観てきました。
このブログでも何度かご紹介している在宅緩和ケア医、萬田緑平先生が主演のドキュメンタリー映画です。作品中には、実際に萬田先生による在宅緩和ケアを選択した5つの家族が出演しています。
今回は、映画を観て改めて感じたことや、上映後のオオタヴィン監督と漫画家の倉田真由美さんの対談を聞いて感じたことをシェアしたいと思います。
緩和ケアとは
萬田先生の著書『家で死のう!』にも書かれているように、緩和ケアというのは、ガンなどの病気に対して、なす術がなくなった人に対して行うものではありません。
治療の選択肢のうちのひとつです。
もっというと、延命治療を望まない生き方ともいえる、と私は解釈しています。
映画には、萬田先生の患者さんやそのご家族が出演されています。
死というと、悲しみや苦しみなどネガティブな印象を持ちがちですが、この映画に出てくる患者さんたちを見ていると、「幸せな死」というものはあるんだなという感想を持ちました。
それは、患者さんが自分で道を選択しているからなんですよね。
家族はその道を支える役目をとつとめます。
映画に出演されていた方々は、死を目前にしても、ご本人もご家族も笑顔を見せていました。
もちろん、お別れする寂しさからの涙もありますが、互いがそれを素直に表現できる状態になっています。
映画を観ながら、生き方、死に方は全て自分でデザインしたいものだな、という思いを改めて胸に刻みました。
オオタヴィン監督と漫画家・倉田真由美さんの対談
私は、この映画をアップリンク吉祥寺で観たのですが、上映のあとには、本作の監督オオタヴィンさんと漫画家の倉田真由美さんの対談がありました。

倉田さんは、お父様と夫を亡くされています。
倉田さんの夫は、すい臓がんのステージ4、治療しなければ余命半年という診断でした。
夫本人の意思にもとづき、抗がん剤治療はせずに、それまで通りの生活を続け、最期は自宅で看取られました。
そして、お父様のことは、次のようなエピソードをお話してくださいました。
お父様は延命治療を望んでいませんでした。しかし、医師を選択を迫られた際に、倉田さんのお母様が人工呼吸器をつけることを承諾してしまったのだそう。
本人の意思を知っていても、いざとなると家族は別の判断をしてしまうことがあるんだ、ということがわかります。
そして、その気持ちもわからなくもありません。
倉田さんは、お母様の心情にも理解はしめしながらも、人工呼吸器をつけて意識のないまま命をつないだ期間は「父にとって望まない時間だったのだろう」とおっしゃっていました。
オオタヴィン監督は、そういったことを避けるためにも「リビングウィル」の重要性を強調していました。
リビングウィルとは、延命治療を望むかどうかなど、終末医療に対する本人の意思の表明です。
それをリビングウィルカードという書面に残しておけば、本人と意思疎通ができない状態であっても、本人の意思を尊重できるというわけです。
そして、医療麻薬の是非についても、ふれていました。
作品中にもでてきますが、医療麻薬を適切に使うと、終末期のQOLをあげることができます。
痛みで動けない状態よりも、痛みをコントロールして動けた方が、元気な状態でいられるからです。萬田先生の緩和ケアでは積極的に医療麻薬を使っています。
しかし、医療麻薬を使用することで死期を早める、という誤ったイメージが広がっているのも事実。
実際は、医療麻薬の使用を避け、痛みに耐え続けて弱っていった結果、ついに耐えきれなくなり死期が近づいたときにようやく医療麻薬を利用するものだから、医療麻薬を使ったら亡くなってしまった、と感じるのだといいます。
それに、「麻薬」という言葉のイメージなども、悪いイメージに影響しているかもしれません。
漠然とイメージに踊らされることがないように、自分の意思で正しい情報をつかみにいく姿勢も重要だなと思いました。
ネイティブアメリカンの言葉
最後に、映画内でも引用されていたネイティブ・アメリカンの言葉を、みなさまにもシェアしたいと思います。
今日は死ぬのにとてもよい日だ。
あらゆる生あるものが私と共に仲よくしている。
あらゆる声が私の内で声をそろえて歌っている。
すべての美しいものがやってきて私の目のなかで憩っている。
すべての悪い考えは私から出ていってしまった。
今日は死ぬのにとてもよい日だ。
私の土地は平穏で私をとり巻いている。
私の畑にはもう最後の鋤を入れ終えた。
わが家は笑い声で満ちている。
子どもたちが帰ってきた。
うん、今日は死ぬのにとてもよい日だ。
私は、死を目前にしたときに、そんな風にいえるだろうか…。
今は自信がないですが、こんな風に思えるように、生きていきたいと思います。
おわりに
今回は、夫と一緒にこの映画を観にいきました。
私がよしとする最期の迎え方を、共有できた気がします。
むしろ、私の口で説明するよりも、一緒に映画を観るという方が伝わりやすかったと思います。
みなさんも、大切な人と一緒に観てみてはいかがでしょうか?
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