40代以降の女性の健康について語るとき、女性ホルモン「エストロゲン」はよく話題にあがりますよね。
実は、男性ホルモンとして知られる「テストステロン」も、女性の健康を支える重要な役割を果たしているのです。
今回は、テストステロンの基本的な働きや、更年期・閉経後の健康との関係について調べてみたことをシェアしていきます。
女性の体にも存在するテストステロン
男性ホルモンと呼ばれるテストステロンですが、実は女性の体内にも存在しています。ここでは、女性におけるテストステロンの働きや意外な役割について解説します。
女性にも必要なテストステロン
女性にもテストステロンが存在している、ということは意外と知られていないのではないでしょうか。
今回参考にした書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』にも次のような記述がありました。
名前のせいで誤解を生んでいるのかもしれませんが、男性ホルモンは男性専用ではないし、女性ホルモンは女性専用ではありません。両方のホルモンが人間にはあり、その比率が男女の性差で異なり、さらに年を重ね変化する。
確かに呼び名からくる誤解はありそうですね。私もそのうちの一人です。
テストステロンは、男性だけではなく女性の体内でも重要な働きを担っています。
書籍にも
閉経前の女性の血中テストステロンの約半分は、卵巣から、残り半分は副腎から分泌されています
と記述があるように、女性の体では、卵巣と副腎でテストステロンがつくられています。そして、テストステロンを原料に女性ホルモンが作られるのだそうです。
女性の体におけるテストステロンの働き
女性の体に存在するテストステロンの量は男性の約1/10(報告によって1/10~1/20ともいわれる)と少ないものの、そのわずかな量が女性の健康や活力に大きく関与しています。
筋肉量や骨密度を維持し、体力や代謝を支えるのはもちろん、気力や意欲、集中力、性的欲求といった心の面にも大きく関わっています。また、脳の神経伝達にも関与しており、認知機能の維持にも役立つと考えられています。
特に、40代以降は加齢やホルモンバランスの変化により、こうした身体的・精神的な「活力」を保つ役割がより重要になってきます。テストステロンは、女性にとっても重要なエネルギー源といえそうです。
更年期とテストステロンの関係
女性ホルモンが急激に減少する更年期。その時期、テストステロンが果たす役割とは何でしょうか?更年期の心身の変化とテストステロンとの関係をみてみましょう。
エストロゲン減少後、テストステロンが支えになる
閉経後、女性の体内でエストロゲンは急激に減少します。一方で、テストステロンは緩やかに減少します。その度合いは、
閉経後の女性のエストロゲンは、閉経前の10分の1になりますが、テストステロンは、3分の2に減るだけです。
とのこと。
つまり、閉経後の女性の体は相対的にテストステロンの影響が大きくなります。
閉経後は、エストロゲンの量が10分の1になってしまうというのも衝撃ですね!これだけ急激に現象するのですから、更年期の女性の体にさまざまな変化が起こるのも、ある意味では納得ですね。
書籍の中には、
「テストステロンを制する者は健康寿命を制す」といっても過言ではありません。
という力強い記述もありました。
テストステロンは、骨密度や筋力を維持し、活力や意欲を支える重要なホルモンとして、更年期以降の女性の健康をサポートしているのです。
テストステロン低下がもたらすリスク
女性の体内では、エストロゲンに対して、緩やかに減少していくテストステロンですが、ストレス、栄養不足、睡眠不足などの要因が重なることで、低下が加速することもあります。
すると、筋肉量や骨密度の低下によるフレイル(※1)、気力や意欲の低下、抑うつ傾向、認知機能の低下など、心身にさまざまなリスクが現れやすくなります。
40代以降に「疲れやすい」「気力が続かない」「何事にも意欲がわかない」と感じたとき、それは単なる加齢のせいではなく、ホルモンバランス、特にテストステロンの変化が関係しているかもしれません。
こうした変化を早めに意識し、生活習慣を整えることが、健やかな毎日を守るための鍵となるでしょう。
フレイルの予防には40代からの対策が重要だと聞きます。健康寿命を長くするためにも、意識したいところですね。
テストステロン補充療法という選択肢もある
テストステロンが不足する場合、治療法はあるのでしょうか?ここでは、女性に向けたテストステロン補充療法の現状と注意点について紹介します。
日本での補充療法の現状
現在の日本では、女性向けのテストステロン製剤は承認されていません。しかし一部の専門クリニックでは、医師の管理のもと、保険適応外の自由診療としてテストステロン補充療法が行われています。
症状や個人差を見ながら慎重に進められる治療であり、自己判断ではなく、必ず専門医の診断とサポートが必要です。
著者の関口由紀先生は、テストステロン補充療法で更年期症状が改善したといいます。ひとつの選択肢として、気になるところですね。
海外での研究
海外では、閉経後女性に対するテストステロン補充療法が研究され、性機能低下に対しては一定の効果が認められているようです。(※2)
ただし、骨粗しょう症や認知機能の改善を目的とした使用については、現時点では研究段階とされています。(※3)今後のさらなる研究に期待が寄せられています。
今回参考にした書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期』
今回参考にした書籍はこちらです。
漫画での解説も組み込まれていて、著者のキャラクターも伝わってきます。
親しみやすい文体なので、読みやすいです。
【著者紹介】
著者の関口 由紀さんは、女性医療クリニックLUNAグループ理事長。女性泌尿器科の専門医として、ホルモンバランスと健康寿命の維持に取り組まれています。
ホルモンを支える生活習慣
テストステロンを無理なく維持するには、日常生活の見直しも重要です。ここでは、ホルモンバランスを整えるための食事・運動・睡眠のポイントをご紹介します。
テストステロンを支える食事
テストステロンを維持するためには、日々の食事でホルモンの材料をしっかり補うことが大切です。特に意識したいのが、たんぱく質、ビタミンD、亜鉛、マグネシウムの摂取です。
たんぱく質は、鶏肉、卵、大豆製品、魚介類などからしっかり取りましょう。
ビタミンDは、鮭、サバ、イワシなどの青魚、卵黄、きのこ類に豊富に含まれています。
亜鉛は、牡蠣、レバー、牛肉、カシューナッツなどに多く含まれ、マグネシウムは、アーモンド、ひじき、納豆、玄米などから摂取できます。
これらの栄養素を意識してバランスよく取り入れることで、ホルモンバランスの維持だけでなく、免疫力や代謝のサポートにもつながります。まずは身近な食材から、無理なく取り入れていきましょう。
▼ビタミンDについてもっと知りたい方はこちら

適度な運動でホルモンを活性化
副腎は、体内のさまざまなホルモンの分泌に関わる重要な臓器です。特に、ストレスホルモンであるコルチゾールや、テストステロンの分泌にも関与しています。
慢性的なストレスがかかると、副腎はコルチゾールを過剰に分泌し続けることになり、次第に疲弊していきます。
副腎が疲弊すると、本来のホルモンバランスを整える力も低下し、結果的にテストステロンなどのホルモン生成にも悪影響を及ぼすと考えられています。
質の良い睡眠を確保し、ストレスケアをすることは、ホルモンバランスを整えるためにも重要です。ストレスをためない生活習慣を心がけ、副腎をいたわる意識を持っていきましょう。
▼質のいい睡眠についてもっと知りたい方はこちら

男性との相互理解も
更年期というと女性に起こるものというイメージが強いかもしれませんが、実は、男性にも更年期はあります。
男性の更年期「LOH症候群」とは
男性も加齢によりテストステロンが減少し、心身に不調を感じることがあります。これを「LOH症候群」と呼び、意欲低下、疲労感、性機能低下などが起こる場合があります。
女性のように、「閉経」といった目安がないので、男性は更年期を自覚しにくいかもしれません。
職場の上司や同僚、パートナーに「最近、イライラしやすくなった」「無気力になった」などの変化が見られたら、更年期が影響している可能性があります。
更年期はお互い支え合う時期
近年では、ハリウッドスターなど海外セレブたちが更年期について語るようになり、日本でも女優さんたちが更年期をオープンに語る機会も増えました。更年期に対する啓蒙活動や企業がフレキシブルな就業形態を整えるなどの動きもみられます。
まだまだ理解が進まない現場もありながら、以前と比べれば、女性の更年期やその症状への関心が高まったのは確かでしょう。
一方で、男性の更年期はその存在すら知られていないことが多いようです。
女性も男性も、年齢とともに体と心が変化するのは自然なことです。性別を超えてお互いに理解し、支え合うことが重要だと思います。
まとめ
テストステロンは男性だけのホルモンではなく、女性にとっても心と体の元気を支える大切な存在だとわかりました。特に、更年期や閉経後の女性にとって、心強い味方となりそうですね。テストステロンを維持する生活習慣も意識していきたいと思いました!
出典・参考文献
※1
フレイルとは、加齢に伴う心身の活力低下により、健康な状態と要介護状態の中間に位置する状態を指します。(厚生労働省)
厚生労働省「広報誌MHLW」
※3
The Global Position Statement on Testosterone Therapy in Women, 2019.
参考書籍
『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー 』(著:関口由紀)